伊藤潤二大研究 増補新版
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一度ハマると中毒になる!不条理で覚めない悪夢のように怖い、伊藤潤二のホラー漫画の世界へようこそ

レビザル
5.0 12
  • 総合: 5.0点
  • わかりやすさ: 5.0点
  • 画力: 5.0点
  • ストーリー: 5.0点
  • キャラクター: 5.0点
  • 世界観: 5.0点
  • 演出: 5.0点

良いと感じた点・楽しめた点

悪いと感じた点・疑問に感じたことなど

総評・全体的な感想

「伊藤潤二大研究増補新版()」は、ホラー漫画家伊藤潤二のファンブックだ。

ホラー漫画は漫画業界全体から見れば、マイナーなジャンルだと思うし、ホラー漫画家伊藤伊藤潤二の知名度が、世間一般にどれくらい知られているのか?疑問だ。

けれど伊藤潤二は、ホラー漫画ファンの間では、絶大なカリスマ的人気を誇る漫画家なのだ。

伊藤潤二のホラー漫画は、何回も実写映画化されているし、アニメ化もされている。

しかも伊藤潤二のホラー漫画は、日本国内のみならず、海外でも人気を集めて高く評価されている。

2019年「伊藤潤二傑作集10巻フランケンシュタイン」が、世界でもっとも権威を持つ、漫画のアカデミー賞と呼ばれている、米国アイズナー賞の最優秀コミカライズ賞を受賞。

2011年「地獄星レミナ」が最優秀アジア作品賞を受賞、同年「伊藤潤二BESTOFBTES」がBestwriter/Aritist部門を受賞。

2022年「伊藤潤二傑作集死びとの恋わずらい」が、再び最優秀アジア作品賞を受賞した。

もはや伊藤潤二は、日本の伊藤潤二ではない。世界の伊藤潤二だ。

伊藤潤二が描くホラー漫画の世界観は、グロテスクで病的で不条理だ。

「富江」や「双一」のように、シリーズ化された作品もあるが、一話完結で終わる短編作品も結構多いから、初めて伊藤潤二ホラー漫画を読む人も、間口が広く入りやすくて楽しめると思う。

伊藤潤二のホラー漫画は、一話完結で終わる短編作品も「富江」「双一」シリーズ作品も「地獄星レミナ」のような長編作品も、あいまいな結末で終わる作品が多い。

でもそれに慣れるとあいまいな結末が、むしろ読者の想像力を刺激する。

主人公の運命が、悲惨な末路を迎えるのか?それとも救われるのか?で、読者の想像力が膨らんでいく。それがやたら面白いので、あいまいな結末で終わるのも、伊藤潤二のホラー漫画の魅力の一つではないか?と思う。

伊藤潤二のホラー漫画の人気キャラに、渕さんというキャラがいる。

登場回数は少ないけれど、伊藤潤二ファンは熱烈に渕さんを推している。

渕さんの元ネタは鮫らしい。一度見たら忘れられないほど、不気味な顔をした大柄な女で、鮫のように鋭い歯が生えている。

初登場作品は「ファッションモデル」逃げ場のない山の中で、怪物のような渕さんから愛されてしまった、主人公のその後の運命は?と想像すると、背筋が凍る思いがする。

伊藤潤二のホラー漫画は、何回も実写映画化されていて、アニメ化もされている。

実写映画化された作品は「うずまき」「うめく排水管」「死びとの恋わずらい」「ギョ」「押切OSHIKIRI」「案山子KAKASHI」など。

また伊藤潤二の、プロ漫画家としてのデビュー作であり、なおかつ代表作の一つでもある「富江」は、合計で六作品も実写映画化された。

アニメ化された作品は、2018年1月〜3月にかけてWOWWOWとTOKYOMXで放送された。原作漫画は「伊藤潤二傑作集」「魔の断片」に収録された作品を、オムニバス形式でアニメ化された。制作はスタジオディーン。2023年には「コレクション」に参加した、多くのスタッフを含めて制作された「マニアック」はNetflix で配信され、2024年7月に TOKYOMXで放送された。

伊藤潤二は1963年7月生まれ。岐阜県中津川市出身。1986年「月刊ハロウィン」(朝日ソノラマ)の新人漫画賞「楳図かずお賞」に投稿した作品「冨江」が佳作を受賞する。この「冨江」が、伊藤潤二のプロ漫画家デビュー作品となり、後に代表作となる。

この佳作受賞には裏話があって、それは「伊藤潤二大研究(増補新版)」の、ルポルタージュ・ホラー漫画家五感に訴える恐怖を描くの章で、言及されているのだが…

当時「楳図かずお賞」の審査員をしていたのが、じつは怪談タレントの稲川淳二だった。

工業デザイナーでもある稲川は、パースを用いて正確な絵を描くことができる。

その稲川が「富江」の原稿を読んだ時「なんて質感のある綺麗な絵を描く人なんだろう、と驚きました」と感じて、最高点をつけて評価した結果、佳作に入賞することができたのだ。

伊藤潤二のプロ漫画家デビューを、結果的に後押しした稲川淳二は、ホラー漫画家五感に訴える恐怖を描くの章の、冒頭で書かれているように、後に東京・築地の朝日新聞社の地下スタジオで、伊藤潤二のホラー漫画「路地裏」を元ネタにした怪談ライブを行った。

それも何かの縁ではないか?と思う。

さて、ずいぶん長い前置きになってしまったけれど(苦笑)今から本格的に「伊藤潤二大研究(増補新版)」の解説をします。表紙と目次をめくって、最初に目に入るのは、全世界に広がる伊藤潤二フィーバー。カラー写真のページだ。

2017年発売された「伊藤潤二研究ホラーの深淵から」では、伊藤潤二の海外翻訳作品は12の国と地域で発売、と記されていたが、その7年後には30を越える国と地域の人達が、伊藤潤二作品を楽しんでいる。

2023年1月伊藤潤二は、フランスのアングレーム国際漫画祭に、再び招待された。このフランス訪問から1年間かけて、伊藤潤二は台湾、アメリカ、ブラジルのイベントに招待され、現地のファンから熱烈に歓迎された。

ちなみに北米で発売された、伊藤潤二作品は全11冊。でも売り上げは全72巻の「NARUTO」95巻まで発売された「ONEPIECE」の販売総数に匹敵するそうだ。

台湾〜上海〜北京を巡回する個展が行われたり、デザイナーのヨウジヤマモトとコラボした、コートやシャツが販売された。

また「伊藤潤二大研究(増補新版)」には載ってない情報だが、2024年に伊藤潤二✕サンリオキャラクターズのコラボグッズが発売された。人気キャラ富江とハローキティのコラボグッズ「ギャル富江」四つ辻の美少年とのコラボグッズ「浮遊する四つ辻の美少年」が発売された(グッズの種類はアクリルスタンド、クリアファイル、ステッカー、ティーシャツなど)

「伊藤潤二大研究(増補新版)」には、ホラー漫画家伊藤潤二の才能を高く評価する著名人が、16人特別寄稿をよせている。京極夏彦、押切蓮介、松本光司、呪ミチル、諸星大二郎、波津彬子、伊藤三巳華、恋煩シビト、今日マチ子、長崎尚志、佐藤優、高橋葉介、今市子、高橋留美子、小島秀夫、ギレルモ・デル・トロ。

全体的に漫画家の寄稿多め、しかも押切蓮介や恋煩シビトのように、伊藤潤二の作品からペンネームをつけた漫画家まで、特別寄稿をよせていて、伊藤潤二への深いリスペクトを感じる。

伊藤潤二のホラー漫画の世界観を、とりあえず早く知りたいなら「伊藤潤二大研究(増補新版)」に収録された、漫画作品を読めばいい。

お蔵出し作品で(結構面白い作品なのに)なぜか全没になった短編漫画「我々は逆さ地帯に迷い込んだ」のネーム原稿、プロデビュー前に描いた未完成のラブコメディ漫画「春一番」も含まれているが、伊藤潤二の代表作の一つ「首吊り気球」の続編「首吊り気球・再来」や、単行本未収録作品「ゴーストハイツ管理組合」「よん&むーの幽霊物件」「恐怖の重層」「恐怖の潮干狩り」「空飛ぶ土偶の夢」「サイレン」「空飛ぶ円盤」「魔声」が読める。

「恐怖の重層」は、「恐怖の重層」制作現場の章で、プロット、予告カット、シナリオ、ネームまで、漫画の制作過程を全て公開している。その「恐怖の重層」の発想の元ネタになったのが「恐怖の潮干狩り」で、そして「首吊り気球」の発想の元ネタが「空飛ぶ土偶の夢」と「空飛ぶ円盤」だそうだ。

伊藤潤二のホラー漫画は、原作漫画はもちろん、実写映画化やアニメ化された作品も、凄く怖くて面白い。「伊藤潤二大研究(増補新版)」に収録された、ホラー漫画作品をきっかけにして、伊藤潤二のホラー漫画の世界に、どっぷりハマって楽しんでください。

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