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2022.12.01私の子どものころも近所の友だちの家の猫がよく家の周りを歩いていたな
良いと感じた点・楽しめた点
私の手元にある「ノラや」の文庫本は1980年初版となっていますが、解説を見ると雑誌への掲載は昭和31年(1956年)からとのことです。
この本は楽しむ本というよりは、著者のきもちになって、いまごろ猫がどうしているかと肝をつぶしながら少しずつ読む本でした。現在では猫を飼うときには動物病院などで完全室内飼いにするよう指示があるのがふつうだと思いますが、私の子どものころはやっぱり飼われている猫が外を歩いていることはよくあり、むしろ家の中に完全に閉じ込めてしまうほうが「かわいそう」と非難されることまでありました。
この本が書かれた時代は、私が子どもだった頃よりもさらにさらに前の時代なので、そもそも「室内で暮らしたほうが事故や誘拐や虐待や恐ろしい病気から守られて健康に長生きができる」という認識がまだなかったころなのかな、と思いました。代わりに庭などを自由に駆け回る姿を読むことができて、その点は貴重かなと思います。
でも、最初の出会いも、人懐っこいノラちゃんがひしゃくにじゃれついたら水瓶に落っこちてしまって助けるところから始まるので、やっぱり外は危ないと思いました。
悪いと感じた点・疑問に感じたことなど
若干古い表記で書かれている本なので慣れないとすこし読みにくいですが、表現がやさしいのでどんどん読むことができました。
総評・全体的な感想
私の家でもかつて猫を飼っていました。うちへきた猫を獣医さんのところに連れて行くと、さいしょから「完全室内飼いにして、お外には出さないでくださいね」という指示があって指示通りに外には一切出さずに暮らしたので、私の家の猫はいなくなることはなかったのですが、ときどき猫が洗濯物と一緒にベランダに出て、ベランダ伝いに屋根のほうへ行ってしまったり、業者さんに来てもらったら隠れてしまってなかなか出て来なくなって「家の外に出てしまったのでは!?」などと騒動になったりしたことはありましたが(けっきょく家のなかから出てきました)、「どこ行ったの!?」ということはやっぱりときどきあったので、その時の気持ちを思い出して読んでいました。
この本には「ノラ」と「クルツ」という2人の猫が登場しますが、私の家の猫も2人いて、さいしょの猫はおそらく個人宅で生まれて初めから人に慣れた子でしたが、あとから来た小さいほうが野良出身で、いつもビクビクしていて家族以外の人間はだめで、ピンポンが鳴ると一瞬で消えるタイプの子でした。猫も生い立ちによって全然性格が変わるんだねという話をしてましたが、どちらの猫もかわいさは変わらないですね。「ノラや」では猫が遊んで駆けまわったり、家族にかわいがられているときの様子が活き活きと描かれているので、いまはこの本を読んで猫たちのことを思い出しています。