こちらのレビューは、一部ネタバレを含む可能性がございます。ご注意のうえ閲覧ください。
2024.11.25悪魔と契約を交わし黒魔術を操る、セーラー服の美少女・黒井ミサが引き起こす、怪奇に満ちあふれた物語
良いと感じた点・楽しめた点
悪いと感じた点・疑問に感じたことなど
総評・全体的な感想
2018年3月に81歳で他界したホラー漫画家、ペンネーム古賀新一(こが・しんいち)本名古賀伸策(こが・しんさく)の代表作が、この「エコエコアザラク」だ。
作品タイトルの「エコエコアザラク」は、作中では悪魔に捧げる呪文として描かれているが、元ネタは1949年ジェラルド・ガードナーが書いた小説に出てくる歌で、古い歌なので意味はもうわからないらしい。
「エコエコアザラク」は1975年〜1979年まで「週刊少年チャンピオン」(秋田書店)で連載されていた全19巻の漫画作品だが、のちに角川文庫から文庫版全10巻が出版されている。
「エコエコアザラク」の主人公黒井ミサは、年齢が女子中学生に設定されているので、セーラー服をよく着て登場する。
ちなみに1980年頃「月刊少年チャンピオン」(秋田書店)に連載された「魔女黒井ミサ」「魔女黒井ミサ2」全2巻では、黒井ミサの年齢が女子高校生に変更されて、その設定変更は1983年ホラー漫画誌「サスペリア」(秋田書店)に連載された「エコエコアザラクⅡ」全6巻にも継がれている(その後1998年~1999年同誌「サスペリア」で「真・黒魔術エコエコアザラク」が連載されたが、単行本化して出版されてない)
さて話を「エコエコアザラク」に戻そう。
主人公黒井ミサはセーラー服の美少女だが、悪魔と契約を交わし(悪魔に魂を売って)黒魔術を操る魔女で、首には悪魔との契約の証である、奇妙な形のアザを持つ。
黒井ミサの両親も黒魔術師で、黒井ミサは幼少期から黒魔術師になるための、厳しい修行をさせられていたようだ。黒井ミサが操る黒魔術は、魔法陣や祭壇や呪文を使う本格的な儀式魔術で、中世ヨーロッパの黒魔術師が実際に用いていた術だという。
また黒井ミサは黒魔術以外にも、タロット占いで辻占いをしたり、水晶玉で透視術を使うことができる。
黒井ミサが通う中学校の同級生は、黒井ミサの正体が黒魔術師であり、魔女であることを薄々知っている。それは黒井ミサを虐めたりすると、必ず黒井ミサから復讐されるという、不気味な噂として広まっている。
他にも黒井ミサが、透視術で水晶玉に映した映像を、同級生にも見せたり、黒井ミサの噂を知った女子中学生が、彼との恋がずっと続くように、恋愛魔術をかけてほしいと、依頼するエピソードも出てくる。
「エコエコアザラク」は、一話完結のホラー漫画だ。
なので主人公黒井ミサ=黒魔術を操る美少女の魔女、という設定を覚えていれば、最初の1巻から追いかけなくても、途中の巻から読んでもついていけるし楽しめる。
ホラー漫画だからといって、結末がバッドエンドで終わるとは限らず、ハッピーエンドで終わる回もある。でも最後は黒井ミサが、悪魔に捧げる呪文エコエコアザラクを唱えて締める。
作者の古賀新一は、福岡県大牟田市立平原小学校3年生の頃、手塚治虫に憧れ漫画家を志望する。中学卒業後に菓子製造会社などで働きながら、独学で漫画を学び21歳で上京した。
プロ漫画家デビュー作は、ひばり書房の貸本向け単行本「黒猫」に掲載された「影なき犯人」1964年「週刊少女マーガレット」に「白ヘビ館」を連載。当時は少女向けのホラー漫画家として、楳図かずおと並ぶ人気漫画家だった。
古賀新一はインタビューで、15年間のホラー漫画家生活で、ネタを出し尽くした結果、苦手にしていた魔女ものをやろうとした。それが古賀新一の代表作となる「エコエコアザラク」を、生み出す原動力になったのだ。人間はギリギリまで追いつめられると、凄い底力を出せるものなのだな…としみじみ思った。
古賀新一のホラー漫画「エコエコアザラク」は、のちにテレビドラマ化、実写映画化、画アニメ化、ゲーム化、写真集化、小説化されて、複数の作品を生み出した。それほど「エコエコアザラク」は、ホラー漫画ファンの間で、高い人気を誇っていたのだ。
最後に「エコエコアザラク」を原作に、発生した作品群を紹介して、このレビューを結びます。
実写映画版「エコエコアザラク」
1995年「エコエコアザラクWIZARDOFDARKNESS」
1996年「エコエコアザラクⅡBIRTHOFTHEWTZARD」
1998年「エコエコアザラクⅢ‐MISATHEDARKENGEL‐」
2006年「エコエコアザラクR‐page」
2011年「EKOEKOAZARAKエコエコアザラク」
同年2011年ビデオ映画「エコエコアザラク-黒井ミサ・ファーストエピソード」(この作品は原作漫画家の古賀新一が、脚本と監督を務めた。黒井ミサが黒魔術に目覚めるまでの物語)
テレビドラマ版「エコエコアザラク」
1997年「エコエコアザラク」
2004年「エコエコアザラク~眼~」
画アニメ版
2007年「エコエコアザラク」DVD発売
ゲーム版
1992年「エコエコアザラク(PC93版)」
1995年「エコエコアザラク(PC版)」
写真集「VISIONSTHEWIZARD」実写映画版第一作と、第二作を併せた内容。
小説版「エコエコアザラク」
1919年「小説エコエコアザラク」岩井志麻子著、誠文堂新光社
元々はホラー漫画家として、ネタに煮つまった古賀新一が、苦手の魔女もの作品を描いた結果、代表作「エコエコアザラク」になり、実写映画版やテレビドラマ版などの、さまざまな関連作品を生み出して、もはやエコエコアザラク現象といっても過言ではない、ちょっとしたムーブメントを起こしていたのだ。
そういえば今思い出したが、音楽雑誌「ロッキングオンジャパン」のライターが、エコエコアザラクを元ネタにして、ヘコヘコアザラシというダジャレを書いていたっけ(笑)
それはまあともかく…「エコエコアザラク」を生み出した、古賀新一のエピソードは本当に凄い!ホラー漫画「エコエコアザラク」の感想とはちょっとズレているけど、追いつめられた人間が出す底力は、本当に大したものだなあと実感しました。