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2024.11.0419年の年月を重ねても色あせない、藤田和日郎作品の魅力
良いと感じた点・楽しめた点
悪いと感じた点・疑問に感じたことなど
総評・全体的な感想
「うしおととら」のテレビアニメ化を知った時、なぜ今さら?と思った。
その理由は単純だ。週刊少年サンデー誌で藤田和日郎の原作漫画「うしおととら」が、連載されていた期間が1990年6号~1996年45号。その原作漫画が完結してから、19年の年月が過ぎた2015年7月、テレビアニメ版「うしおととら」の放映が開始されたのだから。
それに藤田和日郎の独自の世界観を、本当にアニメで再現できるのか?
あの藤田和日郎の絵を、本当に動かす事ができるのか?とも疑っていた。
でもテレビアニメ版「うしおととら」のオープニングを見た瞬間、私の疑念は見事に消滅して、むしろこれは凄いアニメになりそうだ!という手ごたえを感じた。
そして藤田和日郎の原作漫画「うしおととら」を、初めて読んだ時の衝撃を思い出した。原作漫画版「うしおととら」を初めて読んだ時に感じた、まるで空間がグニャリと歪んでいるような奇妙な違和感を、テレビアニメ版「うしおととら」にも感じた。
藤田和日郎の絵をよく見ると、細部までしっかり描きこんでいるのに、全体から受ける印象は大胆で力強く、凄まじい迫力がみなぎっている。作中に出てくる妖怪変化の不気味さも見逃せない。主人公の蒼月潮でさえ獣の槍(けもののやり)を使う場面では、黒髪がとてつもない長さに伸びて振り乱れ、目つきも鋭く尖って異形の身になってしまう。
テレビアニメ版「うしおととら」は、藤田和日郎が描く独自のダークファンタジーの世界を、オープニングだけでなく本編でも見事に再現してくれた!と感じた。
大妖怪とらが雷撃を放つ場面を見ただけで、私はもう充分楽しめた。
でもネットの反応を調べると、ストーリー展開が急ぎすぎて、キャラクターに感情移入できない、キャラクターの心理描写が浅い、原作漫画で人気キャラの凶羅(きょうら)の出番がほぼない。などテレビアニメ版「うしおととら」を、批判する声が見受けられた。
確かに私もテレビアニメ版「うしおととら」を視聴していて、そう感じた瞬間があったので、ネットの批判にも納得できる。
けれど連載期間6年、単行本全33巻の原作漫画を、テレビアニメ版で全39話にまとめようとすれば、ストーリー展開が急ぎすぎたり(内容を詰めすぎたり)人気キャラの出番がカットされるのも、まあしょうがないかな?と思った。
基本的に絵も物語も原作漫画版「うしおととら」に忠実で、最初に私がはっ!心を打たれた名場面…取り憑いた人間の体をじわじわと石に変えて、その恐怖心を楽しみながら喰う妖怪石喰いと、石喰いに体を石に変えられる恐怖心に耐えながら、負けるもんか!と必死に抗うヒロイン中村麻子の姿…それから日本を滅ぼす大妖怪の白面の者(ラスボス大妖怪)との最終決戦も、見事に描いて完結させてくれて、私はテレビアニメ版「うしおととら」を大満足できる素晴らしい作品だと思いました。