こちらのレビューは、一部ネタバレを含む可能性がございます。ご注意のうえ閲覧ください。
2022.12.02【第5巻】いろんな陣営が入り乱れて「何VS何の戦い」なのかよくわからなくなる
良いと感じた点・楽しめた点
※私の手元にあるのは講談社漫画文庫版です。
5巻は何とも言えない内容でしたが、個人的には不良の子たちがいなかったら間が持たないと思いました。出てくるとすごいホッとします。最終的にはスケールが大きくなりすぎて何VS何の戦いなのか戸惑いながら読んでいたように思います。「デビルマンになってしまったが心は人間のままの人間たち」と、悪特隊や夜になると松明を持って襲い来る群衆のような「人間のままなのにまるで悪魔のような人間たち」と、牧村家や不良の子たちのような「(主人公にとって守るべき)人間たち」と「サタン=天使」とその配下のデーモンたちと、デーモンも生きているというのに忌み嫌い滅ぼそうとしたという「神」と、ラストのコマの背景に朝日のように昇ってくる謎の光る軍団も誰なのかわからないし、わからないことが多くて消化しきれない感がありました。これは何度読んでも同じなのですが、だから何度も読んでしまうのかなと思いました。
いちばんよくわからないのがラストのサタンの話で、話の文脈から「サタンは神の子だったが、神が進化した生物の中に凶暴なデーモンが現れたのをみつけて、滅ぼそうとしたのを見て、それに反対してデーモン陣営についた」ということなのかな? と思いました。で、本来氷漬けの眠りについていたのは次の「神との戦い」に備えてのことだったが、寝ているあいだに「人間」が現れてデーモンの星=地球を荒らしまわっていて怒ったので、今回は「人間とデーモンの戦い」という構図になったんだけど、デーモンのアモンが主人公に乗っ取られてデビルマン化して、「人間を守りたいデビルマンとデーモンの戦い」になったんですね。きっと。
で、「デビルマンが守りたかった人間」は失われて、デビルマンに絶望だけが残って、全面戦争に突入して、サタンだけが孤独に取り残される……という流れだったと思うのですが、個人的には「人間のままなのにまるで悪魔のような人間たち」は犠牲者を槍玉にあげているシーンが最後だったので、その後どうなったのかははっきり描かれていなかったのが気になりました。どう見てもこの後のデビルマンはもうなにがどうなろうと関係ないという顔をしていたので、最終戦争の過程でなにもかも死に絶えたとは思うのですが、こうやって書きだしてみても「お話が複雑すぎてむずかしい!」と思いました。でも面白いですね。こういう複雑さ、好きです。
悪いと感じた点・疑問に感じたことなど
お話はすごく面白いけど、本格的に子どもが見ても大丈夫な作品じゃなくなっている気がして老婆心でした。
自分が子どものころはいろんなものに敏感で、本当に限られたものしか受け付けなくて、毎月読んでいる子ども向け雑誌の中でも、なにが嫌なのかはわかりませんが苦手で見られない作品も多かったので、子ども時代を思い起こして、そんな気持ちになりました。子ども時代にこの作品を見ていたら、ショックを受けてしまって、たぶんその後の人生でも再び読むのには抵抗を感じたのではないかと思います。なので、大人になってから手に取ることになって本当に良かった。と感じました。ただ、些細な刺激にも比較的弱い子どもだった私も、いまとなっては比較的いろいろなものを見て楽しめているので、ある程度大きくなればきちんと受け止められるだろうな、という感覚は実感としてあります。
あと5巻にはプードルっぽいデビルマンと思われる子が脇に出てくるのですが、さいしょフサフサして鼻筋も毛皮だったのに、後半に出てきたときにはつやつやの髪の毛になっていて、これはもしや人間の姿に戻っているのかな? と少し気になりました。かわいいのでもっと出てきてほしかったです。
総評・全体的な感想
デビルマンは最初の漫画とTVアニメの後も映画や続編などいろいろな作品が発表されているようですが、元々漫画やアニメをあまり見ないほうの人間なので他はまったく未視聴です。
機会があったら他の作品も読みたいかというと、たぶん読まないと思いました。おそらく現代では自主規制や商業的な制約が発表当時よりもはるかに大きくなっているので、読みながら「いまだったら絶対にできないような表現が多々あるんだろうな」という思いで見ていて、現在だと表現の壁が大きすぎて本来書きたい部分ほど実現不可能になっているのではないか、という気がします。