こちらのレビューは、一部ネタバレを含む可能性がございます。ご注意のうえ閲覧ください。
2022.11.30みま子さんの活躍がたのしみだった
良いと感じた点・楽しめた点
(めちゃネタバレしてます)
松本清張を何冊か読んでみると「これは大好き!」「これは……あまり……」というように、同じ作家なのに、作品毎に自分の評価がはっきりわかれるのが面白かったです。内容の出来不出来ということではもちろんなく、私の個人の好みではっきり評価がわかれるのです。
この「Dの複合」はその中でも、筆頭でお気に入りの一冊です。松本清張の小説のなかで私が好きなのは、どうやら「話としての仕組みが単純に面白く楽しめるお話」で、この作品はまさにそのタイプだと思います。ほかに「渦」もとても好きだったので、同じ理由だと思います。地図を使った謎解き要素のあるお話で、メインの話の流れに人間関係があまり密接に絡んでこないんです。
逆に苦手だと感じたのは「黒革の手帳」「わるいやつら」それと、主人公やその周辺人物の恋愛などが重要なサイドストーリーとして位置づけられている作品などだったので、人間のなまなましい描写には自分はあまり関心を持てないでいるのだな……、と思いました……。もちろん作品は悪くないんです。
悪いと感じた点・疑問に感じたことなど
主人公は作家で、わりと冒頭のほうで、その読者の「みま子」さんという、すこし変わった雰囲気の女性が主人公のところに訪問してきます。数字がとにかく大好きで、物語の根幹にかかわる重要な指摘をしてくれるのですが、私は彼女が気に入ったので、もっと活躍してほしかった! と思いました……。
また、ほかの過去の小説を読んでもそうなのですが、昔は作家が作品などを発表すると住所や連絡先などまで書いてあって、単なる読者が作家本人の自宅を訪問するといったこともできるような時代があったようで、そちらの当時の読者はそういうものだと思っていて気にならなかったであろうディテールに、つい気を取られるということがありました。「悪いと感じた点」というよりは、過去の作品には過去の風景が残されているので、それもまた読む楽しみですけども。
総評・全体的な感想
これは数年前に、松本清張の小説をごそごそ買い込んできてまとめて読んだときの一冊です。それまで自分では松本清張の小説をぜんぜん読んでいなかったのですが、実家の本棚に「点と線」や「砂の器」などいくつかの本が並んでいたのは子どものころから気がついていて、TVなどでも定期に特集をしているのを見ていましたので、すごく有名な作家だということは知っていました。読もうと思ったきっかけは特になくて、たまたまだったと思います。ずっと避けていたのは、元々本は読むけども小説はそんなに読みたいと思わなかったし、ドラマも見ないのでドラマ化された松本清張作品もぜんぜん見ていなかったし、私の頭には有名作家の偉大な小説を理解できる脳みそなんて入ってないのでは? と思っていたからでした。が、読んでみると簡潔で読みやすい文章なのに、内容は細かいディテールまでよく頭に入ってくるので、「すごい! 私にも読める小説があった!」とうれしくなって次々に開いて夜更かしして読んでいた記憶があります。