愛するということ 新訳版
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ネクロフィリアという言葉を覚えた一冊

4.0 71
  • 総合: 4.0点
  • わかりやすさ: 5.0点
  • 文章力: 5.0点
  • ストーリー: 4.0点
  • キャラクター: 4.0点
  • 世界観: 4.0点
  • 演出: 4.0点

良いと感じた点・楽しめた点

愛についてがテーマですが、生き方について書かれている本なので、恋愛とかパートナーとの生活に限らない内容が扱われていると思います。でも表紙のデザインがちょっと女性向けな雰囲気が出ていて抵抗ありますね……。

この本では、生きているものや、生きようとするものに共感し、歓迎して、ともに生きようとする「バイオフィリア」という生き方と、生きているものや、生きようとするものを脅威とみなし、恐怖したり、敵視したり、生きることに反対する「ネクロフィリア」という生き方を呼び分けているのですが、その本を読みながらずっと悲しい気持ちでした。ああ、私はネクロフィリアらしいな、ということがよくわかった気がしたのです。非難されて悲しい、憤りを感じた、というよりは、ああ、その通りだ、という気持ちでした。でもどうしたらいいかはわからない、そう思いました。

この本を読んでよかったのは、「バイオフィリア」という、自分とは異なる生き方があるということが示唆された、ということでした。自分が「ネクロフィリア」としての生き方をしているのだとしたら、生育環境か周囲の誰かから学習した結果なのかもしれませんが、社会に出ることはできたので、ある程度自分の生きる環境をコントロールする希望は私にはあるのです。で、実際に何十年か生きてみて、「自分とはまったく異なる生き方をしている!」と思える周囲の人に遭遇することも、過去を思い出してみると確かにあったように思われます。そう考えると、そういった周囲の人たちの生き方を観察して学習して取り入れるか否かといったことを意識的・無意識的に検討するときに、「バイオフィリア的な生き方をしている方」から学習するか、「ネクロフィリア的な生き方をしている方」から学習するかは大きな分かれ道になるのでは? という気がしました。ネクロフィリアでも社会的な成功を収めている方は非常に多いので、無自覚のままでいると、そういった方の生き方の影響を受けてしまうかもしれないと思うと、少しだけこの本に書かれていることが参考になった気がします。

悪いと感じた点・疑問に感じたことなど

この本の「ネクロフィリア」の定義があまりにも自分に当てはまりすぎな気がしたので、ちょっと自分に対してがっかりして落ち込みすぎた感があります。

でも、世の中よく見まわしてみると、自己批判的になれる人ばかりではないらしい気もするので、私なんかダメでは? と思えるのも貴重な資質だと思って、落ち込みすぎないように継続的に取り組んでいけたら、と思います。根拠のない自信がある人も、私のように自分に対する無根拠で執拗な疑いの気持ちを抱いている人もいるかもしれませんが、どういうスタンスにしても自分の課題をみつけて継続して取り組んでいける、ということがなによりも大事かなと思います。

総評・全体的な感想

この本に関する、他の人との会話のなかで、いつも「うーん」と思うのが、この本のタイトルです。「○○フィリア」=「愛」と訳したのかもしれませんが、日本語単独で「愛する」というと、スピリチュアルとか恋愛とか性愛といった、ちょっと変な雰囲気の話題を予測されるようで、社会的な成功などとは切り離した、人間の生き方がテーマの本なのですよ。ということが伝わる前に話がコケる気がしていて、この本は「悪について」よりも損をしているのでは?????? という気持ちになることがあります。書店の棚で手に取ってもらえることが大事なのかもしれませんが、邦題をつけるときに原題を大きく意訳するのもいいのですが、他のシーンのこともよく検討してタイトルをつけてほしいな…………と思います。

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