こちらのレビューは、一部ネタバレを含む可能性がございます。ご注意のうえ閲覧ください。
2022.11.29物理的な本の大きさがネックかも
良いと感じた点・楽しめた点
この本は同じ著者の「悪について」「愛するということ」に比べると、もうすこしだけ身近なテーマを扱っていて比較的とっつきやすい本ではないかと思います。
ふだん勉強や仕事などといろいろ縛られた生活を送っていると「自由が欲しい、自由になりたい」と誰もが思うけど、いざ「自由」を手に入れてみると、途端になにもかも自分で考えてやれというのが負担に思われて、誰かに正解の道を教えてほしい、自分の足で情報収集したり、自分の頭で考えたりするのはめんどうだ、失敗するかもしれないのにその結果も自分の責任として引き取るのもイヤだ、と思って逃走する、という話で、「た、たしかに……」と思うところから社会的な動物としての自分を考えてみるきっかけになるのかなと思います。
私は「好き勝手にやるんだったら結果もぜんぶ自己責任だよね!」という考えではないタイプで、この本もそういう主張をしているのではなく「人間の心はこういう社会的な要因があるときに、こういう動きをする傾向がある」ということを知る助けになるのがこの本だと思っていて、そのところは裏切られないので、その点は安心して読めると思います。自分を知りたい方におすすめです。
悪いと感じた点・疑問に感じたことなど
やはり著者がだいぶ以前の人物(1900 - 1980)なので、現代についての話が読めないのが残念に感じました。とはいえ、技術はどんどん進歩しても人間自体はそうそう生き方も構造も変わらないので、基本的な考え方は一緒だと思います。
総評・全体的な感想
エーリッヒ・フロムは大好きなのですが、私にとっては読むのに骨が折れるものでなかなか頻繁に読み返すということができていなくて、もったいないなと思いました。内容もそうなのですが、たまたまかもしれませんが私が所有しているフロムの本の形態が、どれもハードカバーだったり大きめの厚めの本だったりして、文庫本のような小さいものを持っていないので、いつも手元にはあるのになかなか手が伸びてないと思いました。寝る前の時間にベッドの中で読むのには、やっぱり顔に激突しますので、ハードカバーや四六版以上の本よりも、文庫本か新書が安全なので、ポータブルな本が増えたらうれしいと思います。