こちらのレビューは、一部ネタバレを含む可能性がございます。ご注意のうえ閲覧ください。
2022.11.29桐の木が気になってしょうがない
良いと感じた点・楽しめた点
読むところはたくさんある作品だと思うのですが、個人的には刺繍が特技のお母さまのキャラクターが活躍しているあたりがとても面白く読めました。手芸には詳しくないので、どこで覚えてきたのかわからないが過去に失われたと思われていたすごい技術で作ったとんでもない品質の刺繍を納品していた、というようなくだりがあり(ちょっとうろおぼえです)、どんなものなのかすごく見てみたくなったのですが、小説で挿絵などはなかったと思うので、もっとヴィジュアル面の補足が欲しいー! と思いました。今度時間のある時に調べてみたいと思います。
悪いと感じた点・疑問に感じたことなど
読んでみて思ったのは、この作品は物語の構造自体がとても新奇なもので、いつまでも新鮮な印象のまま長い間読まれているものなのに、おそらく私がこの作品の影響を受けた後発の作家の作品をたくさん見て育っているせいで「初めて読んだのに、初めて見た気がしない」気がしたのが印象的でした。ああ、きっとこの作品が私が見てきたいろんな作品の元ネタになっているんだろうなあ……、という気持ちがずっとしていて、また、この作品を知ったとき私がすでに初老といえる年齢になっていたので、もっと若いころに手に取っていれば、本来の衝撃が味わえたんだろうな、とも思いました。
きっと今もすごくたくさんの作家に影響を与えているし、いまも小さな子がこの作品を読んで、インスピレーションを得たりしているんでしょうね。
総評・全体的な感想
「ドグラ・マグラ」は私にしては珍しく、ある人から勧められて手に取りました。教えてもらってすぐ Amazon でポチり、去年のちょうど今ごろに読んでいた本で、ふだん「役に立ちそうな本」のような即物的な読書行動ばかりしているので「オカルト系の小説なんだ~」と思いながら読みました。人間のドラマ系の作品があまり得意ではないようで寝てしまうので、自分としては読了できただけでもえらいと思っているのですが、小説はやっぱり苦手らしいと思いました。
また、口コミのタイトルにもしてますが、この作品の主な舞台は九大なのですが、その敷地に植えてある木が「桐の木」であるということがわりと冒頭に出てくるんです。それが、個人的にはめちゃくちゃ気になって、終始気が散ってしまいました。というのは、桐の木というのはすごく葉が大きい木で、一度植えるとものすごい勢いで成長して大きな木に育つので、昔は「女の子が生まれたら桐の木を植えて、嫁入りのときに桐(きり)ダンスにする」という話を聞かされていたし、私が昔住んでいた家の近所に、桐の木があって、その時の出来事もとても印象的だったので、
「桐(きり)!? 桐の木!?」
「桐の木が何本も植わってるの!?」
などと思ってしまって、肝心の物語の筋を追えなくなったりしてました(いま確認したら解放治療場を囲む赤レンガの壁の中の広場の中央に5本だそうです)。
というのは、桐の木の種というのは、とても小さいんだそうです。たんぽぽみたいに綿毛?が生えていてとても小さくて軽いので、ふわーっと飛んで行けてどこに落ち着くかわからないのだそうです。なので、小さな隙間などでもふいと入って落ち着いてしまうと、そこからポッと生えてきた小さな芽が、ひと夏でヒマワリのようにぬっと立ち上がってきて、どんどん大きくなって、1枚60cmくらいの巨大な葉っぱが、バーン! バーン! バーン! と開いてきて、ごく短期間でムキムキ育っていくので、ただの雑草だと思ってちょっと目を離していたら気がついたときには巨大化しているので、除去がたいへん、ということがある神出鬼没の植物らしいのです。
で、その桐の木が、私が住んでいた家の近所にとつぜん生えてきたのを見たことがあったのです。最初はふつうに「あ~雑草だなあ」と思ってしょっちゅうその前を通っていたのですが、短期間でちょっとしたアスファルトの小さな隙間からバアッと出てはみ出してきたのを毎日眺めては「やばい、なんだこの草!」「なにこの大きさ! なんていう植物なの!?」「葉っぱの大きさでググったらわかるだろ。ああ、これだ! ……ええっ、これが桐の木なんだ!」などと一人で面白がっていた記憶がよみがえってしまって、ちょっと集中できなくなったりしまって、申し訳なかったです。なお、その木はやがて近所の人も異変に気づいたようで、数回毟られていたのですが、取り切れていなかったようで1年目の夏に大成長したあと、文字どおり根本的に抜かれてアスファルトの穴もキレイにふさがれて、その後は見かけなくなりました。