こちらのレビューは、一部ネタバレを含む可能性がございます。ご注意のうえ閲覧ください。
2022.11.29丁寧な言葉遣いが心地よいプラトニックなお話
良いと感じた点・楽しめた点
言葉遣いが本当にきれいで読むのがここちよく、楽しかったです。女性の「ミンナ」と男性の「ウィルフリッド」がそれぞれ主人公の「セラフィタ(セラフィトゥス)」に恋をしていて、お互いに交流もあるので現代の恋愛ドラマのように、泣いたり笑ったりドタバタ走り回ったりするような展開になるのかなと心配していたのですが、想像よりもはるかにプラトニックなやりとりで安心しました。とくに「恋に恋する乙女」的な可憐なミンナさんと、社会経験もいろいろ積んだ大人として外の世界からやってきた、浅黒く日焼けしたがっしり系のウィルフリッドさんのどちらも、セラフィタからするとごくふつうの人間で、どちらともいっしょにはなれないけど、人間としては魅力にあふれた人物だということが伝わってきてよかったです。
冒頭で、セラフィトゥス(男性)なセラフィタとミンナさんでこっそり出かけて、ものすごく険しい冬の山を登って幻のような花をみつけるという描写がありますが、きゃしゃな少女の2人が手を取り合って風のように移動していく描写もとてもきれいでした。
悪いと感じた点・疑問に感じたことなど
奥付を見ると「昭和二十九年 初版発行」と書かれているので、1954年ですね。古い本なので、昔の漢字や言い回しが多くて慣れないと読みにくいところがあると思います。たとえば「敎會(教会)」「小さな灣(湾)」「地圖(地図)」などです。
なので、これから読む方は現代語に改訂された本があれば、それを探した方がとっつきやすいかもしれません。ほとんどの文字は前後の文脈で推測できると思うので、それを調べたり楽しみながら読める方は、そのまま読んでみるのも楽しいかもしれません。
総評・全体的な感想
この本はずっと積読していた作品で、どうしてこの本を読みたいと思ったのか忘れてしまいました。山の上では「虎耳草」という植物の花が出てきて、夢のように美しい花として描かれていますが、検索してみたところ「虎耳草」という名前を持っている植物が複数あるようで、「ユキノシタ」と「アロマティカス」というあまり似ていない2つの植物が出てきて、どちらなのか、あるいはほかの植物のことなのか、ちょっと気になりました。
「アロマティカス」は多肉系のハーブっぽい植物で、ふっくらした小さな葉っぱが柔らかい産毛で覆われているそうなので、虎の耳っぽいのかな! と思いました。
「ユキノシタ」は丸い小さな葉で、虎の耳感はあまりなかった気がしたのですが、折り鶴のような可憐な花が咲くそうで、こっちはセラフィタに出てくる虎耳草の花っぽいのかな! と思いました。あと、それを調べている過程で「ユキノシタ」という植物のことはふつうの家の庭などによく生えているので元々よく知っていたのですが、てんぷらなどにして食べられるということを知ってしまいました。なお、アロマティカスも香味が強いのでミント的にサラダなどにして食べられる植物なのだそうです……。よくわからない知識が増えてしまいましたが、おもしろかったです。