こちらのレビューは、一部ネタバレを含む可能性がございます。ご注意のうえ閲覧ください。
2022.11.29視力を失った著者がふたたび物を書けるようになった経緯がよくわかる本
良いと感じた点・楽しめた点
著者は日本語ワープロのキー配列を考えたりしてさまざまな日本の社会の発展に貢献した人だそうです。昔「知的生産の技術」という本で読みました。が、だいぶ前で手元にないのでそちらの口コミは機会があれば書きたいと思います。
この本の内容は、1986年ごろ著者の身に実際に起こったことの体験記でした。
ある日突然、目が見えなくなってしまい、病院に入院していろいろ検査をしたり、その間の仕事や生活どうするといったことがこまかく書かれています。この本は「目が見えなくなった後」に出版されていますが、どのようにして目が見えなくてもふたたび書くお仕事ができるようになったかについても記録されています。
私にとってもっとも印象的だった部分は、まさに本のタイトルになった場面でした。さいしょは目が見えていないということに気がつかずに、「あたりが暗いからまだ夜だ」と思って家族と会話をしているのですが、実はすでに朝になって明るくなっていたのだそうです。見え方も、とつぜんまったくの真っ暗闇になってしまうのではなく、すごく暗い状態だけども、サイズが大きくてコントラストの強いものは感じ取ることができるなど、見え方の状態がくわしく書かれていて、目の見えない状態をすこしだけうかがい知ることができました。また、長い治療の過程で以前の見え方に比べて回復してきたときの描写もありますが、その見え方もきちんと描かれていました。「見えない」といった症状にも、「明るさが感じ取れない」「色が見わけられない」といった、いろいろな種類があると知りました。
悪いと感じた点・疑問に感じたことなど
とくになかったです。すごく強いて言うと、著者は国立民族学博物館の館長をされていて、とても社会的地位の高い人物で、周囲で一緒に生活する人たちや、一緒に働いている方たちが全員とても優秀で、よく働きよく助けあう立派な人々なので、生活上の苦労についての描写が少なかったかもしれません。
総評・全体的な感想
この本を購入しようと思ったきっかけは、だいぶ昔なので忘れてしまいました。ずっと昔に「知的生産の技術」をどこかで薦められて読んで、著者の本をもっと読もう! と思ってほしいものリストに入れて、なかなか読む機会がなくておそらく10年ほど放置してました。なので本の存在はずっと前から知っていましたが、読んだのはごく最近です。本がたまりすぎたので部屋が狭くなってきて耐え難くなってきたので整理しているときに「ああ! これ読もう!」と思って読みました。
「読もう!」と思った理由は、「表紙」でも「タイトル」でもなく、「著者名」でした。自分で買おうと思ったのは覚えているのですが、記憶が薄れていて「なんでこの本を読もうと思ってとっておいたか」はすっからかんに忘れていたので、表紙を見ても「なんだっけ……見覚えはあるけど……なんで読もうと思ったんだっけ……この本……!」なんて思っていました。それでも著者の名前だけはよく覚えていたので「ああ、この方の本だったら読もう!」と思ったので、前回の本を読んだとき相当面白かったんだな、と思いました。「知的生産の技術」もまた機会があれば再読したいです。